口腔外科 oral-surgery
口腔外科
口腔外科とは、口の中をのぞいて見えるすべての組織、歯、舌、歯茎、頬の粘膜、舌の付け根、下アゴ、上アゴ、唇(くちびる)と、粘膜に隠れている唾液腺(つばを出す組織)、アゴや顔の形をつくっている骨、アゴの関節などなど、これらに生じた病気を診断、治療する診療科目です。
代表的な疾患
食べ物の違いにより、現代の日本人は縄文人などの祖先と比べて噛む回数が少なく、このため顎の骨が小さくなっています。一方、上下32本ある歯の大きさは縄文人とほとんど変わりません。このため現代人はすべての歯があごの骨に並ばず、親知らず(一番後ろの歯)があごの骨に埋まったままになりやすいのです。
不完全に埋まった親知らずは口の中の細菌による感染がおきやすく、歯ブラシなどで細菌を除去することが難しいのです。感染がおきた場合は、抗菌薬により炎症を和らげますが、再感染をおこす事が多いため抜歯が必要になる事が多いです。
まっすぐ生えている親知らずの場合、虫歯もなく歯ブラシもしっかり出来ていれば、将来歯の移植やブリッジの土台として使える可能性もあるため保存することもあります。
親知らずがある、気になる場合はまず担当医に相談し、よく説明を受けましょう。
顎関節とは耳の前にあるあごの関節です。「顎関節症」とは、①顎関節や咀嚼筋(噛むときに使う筋肉)の痛み、②顎関節の雑音(コクッ,ジャリジャリ)、③開口障害(口が開かない)、を主な症状とする病気です。原因は、歯ぎしりやくいしばり、あごの打撲などの外傷、ストレス、歯科治療などで長時間、口を開けていた場合にも起こります。治療法は鎮痛薬の服用,マウスピース(スプリント)の使用,開口訓練などがあります。
「歯根のう胞」は、顎の骨にできるのう胞の中ではもっとも発生頻度が高いものです。歯の神経に起きた炎症が根の先端に波及し、生じた炎症性病変がのう胞状になったものをいいます。一般的に無症状ですが、エックス線写真検査によってみつけられることが多いです。
原因となる歯の根っこ付近の骨に膨らみがみられ、押すと痛みを伴うことがあります。上あごにできた場合、のう胞が大きくなると周りの骨を吸収してしまいます。
小さいものであればまず歯の根の治療を行い、のう胞の縮小化がみられなければ歯の根の先端を切除し、外科的にのう胞を摘出する手術を行います。治療時間は膿胞の大きさにもよりますが通常の局所麻酔で30分〜1時間程度で終わり、治療後は定期的なレントゲン撮影をして経過を診ます。
口の中に多く存在する小唾液腺から唾液が何らかの原因によって流出障害が起こり、粘液が貯留したものを「粘液嚢胞」といいます。粘膜を噛んだり、歯の先端が当たる事を繰り返してるうちに生じる事が多いです。半透明で、壁が薄いためよく潰れたりします。潰れても、また同じ所がふくらんできます。
治療は通常の局所麻酔でのう胞を摘出します。原因になった口唇腺もともに摘出することで再発を防止します。
カンジダ症とは、お口の中の常在菌であるカンジダ菌(カビの一種)による感染症です。病原性は低いため、健康な人のお口には発症は認められません。体力や抵抗力が低い乳幼児や老人、悪性腫瘍、免疫不全、糖尿病などの基礎疾患をもった患者に発症します。
また抗菌薬やステロイド薬の長期投与により、お口の中にいる細菌のバランスが崩れたときに発生しやすいといわれています。頬の粘膜や舌表面に、拭うことができる白い白斑ができることが特徴です。抗真菌剤の軟膏やうがい薬、飲み薬の投与を行います。
口の両端を口角といいます。口角炎とは、その部分にひび割れができてしまい、口を開けるときに痛くなるものです。細菌感染、カビの一種のカンジダ、ウイルス、薬剤、ビタミン不足などが原因といわれており、必要に応じて細菌検査や血液検査を行い、原因を調べる必要があります。口内炎と同じで、お口の中の清掃と、軟膏を使います。
唾液の分泌量が低下してお口の中が乾燥する病気を「口腔乾燥症」といいます。
原因としては、加齢にともなうもの、薬物によるもの、糖尿病などの全身疾患によるもの、精神的ストレスなどさまざまです。症状としては、お口の中のヒリヒリ感、舌の痛み、口臭、歯周病が現れることがあります。口腔乾燥症の場合には、原疾患の治療の他、人工唾液やうがい薬、保湿剤等を使用します。